2009年12月

快楽亭ブラックの毒落語

「快楽亭ブラックの毒落語」 平岡正明 彩流社 ☆☆☆ 2009年9月30日初版
img20091231.jpg 二代目快楽亭ブラックの落語を取り上げています。僕はこの人の落語は聞いたことがないのですが、この本によるとかなり『毒』のある落語のようです、古典落語をパロディーにした落語ということで、放送禁止用語がふんだんに出てくるため、まずマスメディアでは見られないという。こういった本は対象にした作品を読者に体験させたくなるかどうかがキモですが、平岡正明の本はそういう意味では満足させられます。ただこの本は平岡正明が亡くなったせいで最終校正がされていないんじゃないだろうか? と思わせる文がところどころあります。(まあ仕方がないが)
 あと、全然関係ないのですが、今朝の毎日新聞に今年亡くなった人のリストが載っていましたが、外国人でアンドリュー・ワイエスとケン・アナキンが亡くなっていたんですね。知らなかった。まあ、どちらも90歳以上ですからいい年ですが。

ザ・コールデスト・ウインター

「ザ・コールデスト・ウインター」上下 デイヴィッド・ハルバースタム 文藝春秋 ☆☆☆☆ 2009年10月15日初版
img20091229.jpg ハルバースタムの遺作。朝鮮戦争のドキュメンタリーです。1章で仁川から上陸した国連軍が平壌を占領し鴨緑江まで北上し戦争はもう終わると楽観視しているところに大量の中国軍の参戦があり、広く薄くなっていた戦線で国連軍が崩壊していくところから始まります。そこから開戦前夜に戻り、開戦、アメリカの参戦、釜山橋頭堡攻防戦というふうに展開するのですが、そこにからむアメリカの国内政治、中国の国民党台湾政府との関係などが興味深い。また、無能な指揮官を持った軍隊の悲惨さもここでは強調されています。これは朝鮮戦争の話ですが、それだけに限らず、ベトナム戦争からイラク戦争にまでつながるアメリカという国の国際社会への関わり方にまで視点が広がっています。
 途中マッカーサーの生い立ちにふれた章があるのですが、そこを読みながら思ったのは、マッカーサーと東条英機の、偉大だが、失敗した父親を持っていたという皮肉な類似点でした。

カリガリ博士

「カリガリ博士」 ロベルト・ヴィーネ 1919年製作
 いま読んでいる「時代が病むということ―無意識の構造と美術」という本でドイツ表現主義に言及しているのでその関係で借りてきました。内容はいまさら紹介するまでもない映画史に残る作品ですが、いま見直してみると、書き割りの背景がアニメーションとの合成のようにも見え、最近の映画のCGによる背景作りの源流のようにも見えなかなか興味深かった。

流れ行く者

「流れ行く者」 上橋菜穂子 偕成社 ☆☆☆ 2008年4月初版
img20091220.jpg 守り人シリーズの短編集。少女時代のバルサと師父ジグロ、子供時代のタンダの物語。長編では物語の厚みに物足りなさを感じたのだけれど、これらの短編ではそういう心配は少ない。ただ少女時代のバルサがストイックすぎる気もしますが。

英雄の書

「英雄の書」上下 宮部みゆき 毎日新聞社 ☆☆☆ 2009年2月15日初版
img20091220.jpg 友理子の兄、大樹が同級生を刺して失踪してしまう。小学生の友理子はユーリとなって兄を捜しに、「無名の地」『物語』の世界へと旅に出る。「ブレイブ・ストーリー」と同工異曲。もっとも今度は、ものがたる者、物語とは何か?という視点が入ってくるところが眼目ですが。そこに本を集めるものの異常さなどもあって苦笑いさせられますが。ただ少し突き詰めかたが浅い気もします。もとが新聞小説だからある程度仕方が無いのか。
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