2008年12月

ノヴァーリスの引用

「ノヴァーリスの引用」 奥泉光 新潮社 ☆☆☆
img20081231.jpg 恩師の葬式で再会したかつての同級生四人、話題は「死」からもうひとりの同級生の自殺の謎になるが・・・。と、ミステリー風味ではじまり最後は「『吾輩は猫である』殺人事件」の原型のような終わり方。だいぶ慣れてきましたがそれでもこのミステリー風味が解決されないまま終わってしまうのにはどうしても欲求不満が残る。書いてる方はそれが目的じゃないのだけれどねー。

クマは眠れない

「クマは眠れない」 米田一彦 東京新聞出版局 ☆☆☆★
img20081231.jpg 2004年のツキノワグマの異常出没の謎と、21世紀に入ってからの大量駆除傾向の問題点を主に取り上げています。異常出没については、気象的要件を上げています。異常高温、湿度、大型台風と気圧の低下等、そして大量駆除は、2000年に改訂された鳥獣保護法によって、国や県のほとんど責任放棄が起こり、市町村での対応はそこの責任者次第という状態になってしまったことからくるとしています。この2点による著者の危機感はかなり大きく、この本にはその焦燥感がかなり伝わってきます。
 ちなみに東京都では年に10頭前後しか駆除されていないそうで、これはかなり少ない数字です。ここらではクマよりも鹿の方が問題なのでしょう。先日、鷹ノ巣山に登ったときには2度ほど鹿の姿を見たし、鳴き声も聞きました。鹿の鳴き声を聞いたのは初めてですが、ミとピの中間くらいの音を長く曳き、びっくりするくらい大きな声で鳴きます。鷹ノ巣で鹿を見たのは初めてですがその他にも雪の降った後だけにカモシカやクマらしき足跡も見受けられました。動物層が濃くなっているのか?とも思いましたが、どうなのか。

プラトン学園

「プラトン学園」 奥泉光 講談社 ☆☆★
img20081229.jpg 『猫』に続いて「坊ちゃん殺人事件」かと思ってしまった。だって島に新しく赴任した主人公に赤シャツは出てくる、野幇間は出てくる、さらにマドンナまで出てくるのだから。と思ったらオウムを意識した話になり(なにしろ作中の日時が1995年の3月上旬)そういう風にするの? と思ううちに殺人事件はどこかに行ってしまい、最後は小説の人称の問題になってしまう。なにか展開が勝手に右往左往してしまったような。こんなの新聞連載小説でやったのかー、とちょっとあきれる。

まんまこと

「まんまこと」 畠中恵 文藝春秋 ☆☆☆★
img20081227.jpg 神田の町名主の息子とその悪友たちが、持ち込まれる事件を解決していくという連作短編。町名主ということで奉行所へ持ち込むまでもない小さな事件というのがうまいのと、主人公麻之助の昔の思いの相手という設定が、同じような設定の「つくもがみ・・」よりもずっと良いアクセントになっているのが成功してか、此の後の物語ももっと読みたいと思わせます。

ワールド・オブ・ライズ

「ワールド・オブ・ライズ」 リドリー・スコット ☆☆☆
 自分たちは安全な場所で子どもたちとの家庭生活を送りながら、携帯電話で指令を出して、アラブの現地人は平然と見捨て、彼らの家庭生活など顧みることはなく、それで文明社会を守っている、と嘯く傲慢さ。また、科学兵器に依存し、古来の人間関係の軽視という愚かさ。などは良く出てますし良くここまでやったなと評価しますが、では何故アメリカはそうするのか? というところまで切り込んでくれないと、という不満は残ります。でもそれを1本の映画でやれというのは無理な注文かな。
livedoor プロフィール
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ