2008年11月

天使の歩廊

「天使の歩廊」 中村弦 新潮社 ☆☆☆
img20081130.jpg 明治から昭和始めにかけてのある建築家の半生とその手がけた建物と依頼主との物語。最初、下手な文章だなーと思っていたら、やはり処女作でファンタジー大賞受賞作だということでした。文章のまずさは読んでいるうちに気にならなくなりますが、建築家の半生も、依頼主との物語ももうひとつ脹らみが足りない気がします。ファンタジーへの踏み込み方が弱いというか。

ボーフォート

「ボーフォート」 ヨセフ・シダー ☆☆☆
 2007年製作のイスラエル映画。12世紀、十字軍のころからレバノンにある要塞ボーフォートを支配しているイスラエル軍の一部隊。昼間は迫撃砲やミサイル攻撃にさらされ、夜はヒズボラの夜襲に備える。そうした中、兵たちは疲弊消耗し、戦死者も相次ぐ。やがて撤退の命令が出され・・・。というような話ですが、敵の姿は全く出てこず(砲撃だけ)、物語もほとんど兵士たちの会話がほとんど。そうなるとどうしても見ていて眠くなる。実際の戦場というのはこういうものなのかもしれませんが。
 2007年ベルリン映画祭銀熊賞受賞作品だそうです。

ライカ物語

「ライカ物語」 エーミール・G・ケラー 光人社 ☆☆☆
 親子二代にわたってライツ社で働いてきた人のライツ社に関する話。原著は1986年だから20年以上前ですので、ミノルタと提携していたころまでの話。オートフォーカス機が出てくるあたりまでです。そういった新しい話よりも20世紀初めから最初のライカが出てくるあたりまでが興味深い。家族会社としてのライツ社の創業から顕微鏡会社としての発展、ライカの登場、戦後のあれこれ、そしてM3の登場まで。あとは、ハーフサイズのライカHという機種を企画したが、M3が売れすぎて、製造する余力が無く中止になったというもの。この試作品を見ると面白い。レンズキャップが上に跳ね上げられてレンズがせり出してくる仕組みになっている。なかなか魅力的な形です。
 しかし、ライカは高すぎる。ほとんどが人件費だといっているが、それにしてもなー。まあ、私はライカ狂いじゃないからいいけど。

世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情

「世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情」 ベンジャミン・ウォレス 早川書房 ☆☆☆
img20081127.jpg 1985年12月5日、ロンドン、クリスティーズで1本のワインが競売にかけられた。シャトー・ラフィット1787年、しかもボトルにはTh.J.という頭文字が刻まれていた。これはトーマス・ジェファーソンの頭文字で、彼がフランス滞在中に買った中の1本だという触れ込みだった。しかも中身は全量残り、(おそらく)飲むこともできる。その競売は二人の競り手間でヒートアップし最終的に10万5000ポンド(当時の為替レートで約3000万円)で落札された。
 しかし、その後このジェファーソン・ボトルの信憑性に疑問の声があがった・・・。
 という、希少ワイン・ヴィンテージワインにまつわる闇に関する、ドキュメンタリー。まあ、そこに登場する人物たちの桁違いの俗物さにはあきれるよりも笑ってしまうくらいだが、少なくともそこでは大きな金が動いている。(これに比べると日本のワインコレクターなんて可愛いモノだと思ってしまう)葉巻の世界でもそうだが、こういったヴィンテージ物にはどうしても偽物が出てくる。
 ただこの本、題材は面白いのだが、構成があまりうまくなく(特に前半)一部読んでいてイライラさせられた。もう少しすっきりとした構成にできなかったのか?

若山×勝の軌跡4

「続座頭市物語」 森一生 1962年作品
 これはやはり初期三部作の中継的な位置。前作から一年後の設定。実の兄との女を巡っての確執等はあるけれど、森一生の演出も「不知火検校」ほどすっきりしてないし、カメラも2度ほど変な動き方をするし。終わりかただけは、エッこんな終わりかたするの! と驚いたが。
 殺陣については3人ぐらいまでが相手のときはフルショット、ワンカット処理ですが、さすがにそれ以上多くなるとカットを割っている。ただそれも変な所でカットしてあったりして、ちょっと戸惑った所もあったが。
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